昨日、IOCより正式に東京オリンピックを来年2021年夏までに開催する条件で延期が発表された。全世界に影響を及ぼしている新型コロナウイルスが原因であり、仮に夏までに開催国日本で収束していたとしても、世界的には厳しい状態であると思われ、賢明の判断であると思う。
しかし、これにより全競技に多くの問題が発生する。特に個人競技で決まっていた代表選手の処遇で、代表選考を再度行うのか、はたまた持ち越しするのか。先日の柔道日本代表発表記者会見での井上康生監督の涙が頭をよぎる。
また、未開催の陸上や競泳などの日本選手権一発選考なら、まだ余地はあるが、1年以上かけてポイント制で決めている卓球やバトミントンなどの競技は現状多くの大会が中止や延期となっている中、今後どのようにレギュレーションを変更するのか。
各競技団体や協会には苦渋の決断を迫られ、主役の選手達にはどういう形になっても残酷な結論になってしまう。
一方、団体競技は国別で各予選を通過しており、代表選手もまだ選出されておらず、出場国は持ち越しで問題ないと思うが、その中でもサッカー男子だけは選手選考の点で大きく話が変わってくる。
サッカー男子の問題
まず、一番はサッカー男子には代表選手は23歳以下でなければならないという年齢制限のルールがある。1997年1月1日以降に生まれた選手、つまり今年23歳になる選手にしか出場資格はない。このルールを1年後に適応すると、来年24歳になってしまう選手は出場できなくなってしまう。
該当選手は、日本代表でいうと私が以前書いた「俺の東京五輪・サッカー編」にて名前が挙がった板倉滉、小島亨介、中山雄太、町田浩樹、相馬勇紀、三好康児、遠藤渓太、小川航基らである。当然他にも代表入りの可能性がある選手はいる。彼らは谷間の世代として、延期の代償となり、悲劇的に資格を失ってしまうのか。
私は当然、来年開催でも出場資格は持ち越し、満24歳の選手まで出場するべきであると考える。
しかし、IOCとFIFAがその辺りをきちんと歩み寄って結論を導けるかが不安である。なぜなら、アマチュア条項にて強硬にプロ選手を参加させなかったIOCと、その後世界的スポーツとなり最高峰の大会であるワールドカップの権威を守るためにA代表を出場させないFIFAの溝は、埋まることはない。この関係性を考えると別の問題が浮上する。
主要大会とのバッティング
先だって決定されていたEURO2020(欧州選手権)とコパ・アメリカ(南米選手権)の来年への延期である。W杯に次ぐビッグトーナメントであるこの2つの大会をFIFAが更に延期するとは考えられない。すなわち来年夏には、五輪含めサッカーの主要国際大会が3つも開催されるのである。
となると、選手の取り合いになる。EUROやコパは、FIFAが認めるA代表マッチなので、代表に招集されればクラブは選手を送り出さなければならないが、五輪はカテゴリー大会であり、代表に強制力はない。各クラブはオフシーズンのビジネスや、各大会での選手の負傷があった場合など、ビジョンが大いに見出せなくなってしまう為、五輪には消極的にならざるを得ない。特にビッククラブほどである。
しかも、2021年の23歳以下の五輪大会になれば、たかが1年でもスター選手の若年化により少なからず保有できる選手は多くなり、大義名分によりクラブの面目も保たれる。もしそうなれば、これらの問題が各国同じ条件とはいえ、日本代表の戦力には特に大きく影響を及ぼしかねない。
エース久保建英
そこで最も危惧されるのは、圧倒的なポテンシャルと卓越した技術も持ち、スペインで輝きを放っている日本代表(候補)の久保建英である。彼は現在マジョルカにレンタル移籍しているが、今後1年の活躍次第では、所属である世界的ビッククラブのレアル・マドリードに戻る可能性は十二分にある。世界中のスター選手が集うメガクラブは、EUROやコパに大量の選手を送り込むので、それ以外の選手は確実に囲い込むであろう。そうなると、来年の東京五輪では久保を招集出来なくなる。
最年少ながら間違いなくU-23日本代表チームのエースである彼抜きに、戦わなければならない。その他の海外組の選手にも、彼ほどではないにしろ同様に招集できない可能性は残る。
「史上最強の五輪代表」で臨むはずであった自国開催。最悪のシナリオとなると、来年の23歳以下のメンバーでかつビッククラブ所属選手は招集出来ない状態で挑まなければならない。
もはや新型コロナウイルス同様で、前途多難である。
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